NHK BSマンガ夜話 まんが道

先月28日、NHKBSマンガ夜話まんが道が取り上げられた。藤子不二雄作品が取り上げられるのはドラえもんに継いで2回目であるが、安孫子作品が取り上げられるのは初めてである。だが、前回のドラえもんの回はあまりにもひどかったため、正直、あまり期待はしていなかった。

ドラえもんの回(こちらでダイジェスト版が読める模様)を思い出してみると、放送開始直後、夏目房之介が「時間がなくて読み切れなかった」といきなり告白してテンションが下がる。極めつけは、岡田斗司夫が劇画ドラえもんという存在しない作品を存在するかのように言ってしまった事であろう。さらに、このことに対して誰からもフォローが入らなかった。後日、ネットや雑誌媒体を通じても謝罪や訂正はなかったと思う。当事者も忘れているかも知れない。いつもであれば、この番組は出演者と視聴者共にマニアックな限られた狭い世界で済んでいたのだが、この回は、ドラえもんという国民的作品ということもあって、初めて見た一般視聴者が多数いたはずだ。しかし、当然の事ながら番組はいつもの雰囲気で進行した。あの番組を定期的に見ている漫画に詳しい人であれば、「また間違ったこと言ってるよアハハ」で済んだのであろうが、初めて見た大勢の視聴者の中にはあの番組で出演者達が語ったことを100%信じてしまった人も多かったのではないだろうか。

大手藤子不二雄ファンサイトの掲示板では未だに劇画ドラえもんに関する質問を年に1、2回は目にする。未だに劇画ドラえもんなる存在しない作品の存在を信じている人は多いと思われる。放映直後、当時の大手藤子ファンサイトは非難囂々の声であふれたことを思い出す。

さて、今回のまんが道はどうだったのか。感想を述べる前に注釈を付けさせていただくと、実は、私自身、まんが道を読んだのは現在ブッキングから続刊中の藤子不二雄Aランドが初めてであり、従って、まだ最後まで読んでいない。その上で、一部、自分が未読の部分の話も出てきたので、ドラえもんほど作品自体に詳しくないというか、無知に近かったりする。

というわけで感想にはいると、今回はまあ良かったというか、悪くはなかったと思う。オフレコ部分の事はわからないが、テレビで流れた部分ではいしかわじゅんが珍しく批判めいたことを言っていなかったのもあるか。少しは批判も期待していたのだが。良かったのは、藤子不二雄atRANDOMでよねさんが書いているように、少年チャンピオン少年キングなどの雑誌によって要求される漫画や許される表現の違いについての話や、ジャングル大帝の引用についての話などである。ゲストがいなかったのも良かった。ドラえもんの時は、鈴木蘭々がかろうじて許せるレベルで、千原兄弟鴻上尚史は明らかにミスキャストだったからなあ。残念だったのは、公開録画だったため視聴者からの生FAXが読まれなかった事と、会場からの質問の時間がよけいだったこと。時間が不足気味であまり深く掘り下げられなかったことである。また、今回も、事実誤認の発言がいくつかあったようであるが、これは夏目房之介の場合ご自身のホームページで訂正を行っている。生放送が中心である事と番組形態が特殊であるが上に事実誤認の発言が出てしまうのはある程度仕方がない面もあろうが、番組の公式サイトでフォローをしてもらいたいものだ。

さて、今後、藤子作品が取り上げられるとしたら、何になるのであろうか。個人的には、合作ではオバケのQ太郎、F作品ではエスパー魔美、A作品ではプロゴルファー猿をやってもらいたいと思っている。

最後に、現在、まんが道を少しずつ読んでいるのだが、実に面白い。いしかわじゅんが批判もせずに感動していた理由もわかる気がする。藤子不二雄A作品には興味がない人やドラえもんファンを名乗る人達にもぜひ読んでもらいたいと思う。数年前まで、書店でほとんど見かけない文庫版と古本屋で高値が付いていた藤子不二雄ランド版しかなかった所に、せっかく藤子不二雄Aランドが復刊され手軽に読むことができるようになったのだから。昨年、大手藤子ファンサイトの掲示板で投げかけた際には藤子不二雄が別れる前を知らない若い世代からあまりにも悲しい結果が帰ってきたからなあ・・・。