東武野田線吊り掛け5070系本日引退

東武野田線には5070系と8000系の2種類の車両で運転されていたが、10月19日のダイヤ改正で5070系が引退することになった。主な引退理由は、ダイヤ改正でのスピードアップにより5070系では定時運転ができなくなるためである。5070系については、検索すれば多数出てくる専門サイトの方に詳しい解説があるので、ここでは概略だけ書いておく。

この5070系、実は、車体は野田線を走る車両では一番新しく、最後まで残った3編成は1985年製である。にもかかわらず、なぜ引退しなければならないのか。それは、下回りが旧式であるためである。5070系は昭和30年代に製造された車両の車体だけ新調した形式であるので、下回りは古いのだ。その旧式具合は半端ではなく設計されたのは1940年代にまでさかのぼる。現在の一般的な電車と異なる最大の特徴は加速時に独特のうなりを発する吊掛駆動であるということである。その音の大きさがまた半端ではなく、線路から約3kmは離れている我が家でも夜になれば聞こえるほどであった。また、8000系は台車が乗り心地の良い空気バネであるのに対して、台車も以前の車から流用した5070系は板を重ねただけの板バネであるため、線路の状態が悪い場所を通過する際にはかなり激しく揺れる。乗り心地も音も一般的にみればうるさく迷惑な存在でしかないのだが、鉄ちゃんにとっては、逆にそれがたまらなくてファンも多い。

さて、引退にあたり、東武はさよなら運転も企画してくれたので、通学でお世話になっている電車でもあるし、乗ってきた。その様子と、引退直前にたまたま来た際に撮った写真をいくつかお目にかけようと思う。V601SHはこんなところで役に立った。



9月30日。いつも通りの平穏な一日



晩年は再塗装もされず車体のあちこちに痛みが



ヘッドマークはさよなら5070系ではなくダイヤ改正を告知するもの



今では貴重な板バネ台車。乗り心地は文句なしに悪い



8000系トップナンバーと並ぶ記念列車。左は1985年製、右は1963年製。しかし今回消えるのは左。



記念列車のヘッドマーク



臨時列車ではあったが一般客も乗ることができた。

10月17日13時09分、さよなら運転の記念臨時列車七光台行きは柏を出発したが、その際には駅構内でもお別れの放送があった。記念列車の車掌も今回で引退することを放送で説明していた。いつもはのんびりと走る野田線だが、この臨時列車は結構飛ばして、独特のうなり音をまき散らした。車内には録音機器を持った鉄ちゃんもちらほら見られた。この電車は外見は至って普通なので、録音する方が価値があるという声もある。自分は録音機器を持ち合わせていなかったが、V601SHボイスレコーダー機能で録音してみた。専門機器には及ばないだろうが、はっきりと録音できていたので、この機能も意外と使える。沿線の踏切や途中駅にはカメラを構えた鉄ちゃんだらけ。野田線でこんな光景は滅多にない。線路の脇には手を振ってくれている親子の姿も見られた。時間の都合上、運河で下車して見送ったが、正式に引退する18日も乗ることができた。

ダイヤ改正以後は8000系のみとなるが、野田線を走る8000系は1970年代より以前に製造された車両がほとんど。車体だけは一番新しい電車が引退して、30〜40年以上前に作られた電車ばかりになってしまった。8000系の引退が始まりステンレスの電車が走るのはいつの日のことやら。