ドラえもんのメインキャストがついに交代
唐突であるが、ぼくドラえもんの特集って当初の予定とかなり変更があるな。その惰性で買い続けていたぼくドラえもんであるが、11月20日に発売された19号は結構読み応えがあった。その中の、すがやみつる氏が寄せた文に次のような箇所があった。
最後にお会いしたのは、1995年春、SF大会授賞式の会場だった。(中略)会場の隅にポツンと立っていらした藤本先生に声をかけ、長い時間、話をさせていただいた。(中略)ぼくがこんな近況報告をすると、藤本先生は、“いいですねえ・・・”と、うらやましげな声を出された。“ぼくは『ビックコミック』や『SFマガジン』で描いたような短編SFをもっと描きたいんですけど、「ドラえもん」が忙しくて、そうもいかなくて・・・。SFファンや大人向けのSFは、子供向けより楽しんで描けるし、息抜きにもなるけど、そんな作品が描けなくて、ちょっと、辛いんですよね・・・。”
と、珍しく愚痴めいたことを話された。
藤子・F・不二雄は娘に対しても「ドラえもんを終わらせてくれないんだ。もう行くところがないよ。」と話していたことを、娘自ら、SF短編パーフェクトの後書きで明らかにしている。ドラえもんはあまりにも巨大になりすぎて、原作者ですら止めることはできなくなっていた。原作者没後も、その流れは止まるどころか、待っていたかのようなグッズの乱発に代表されるように、宇宙に飛び出した栗まんじゅうのごとく膨張し続けている。テレビアニメも劇場映画も製作は続けられ、そして、来年、高齢化が進んでいたキャストを一新してまで続けることを選択した。
1979年4月の放映開始から26年目にして、とうとうメインキャスト交代である。近年は大山のぶ代演ずるドラえもんの声はしゃべり方もゆっくりになり、1980年代中盤頃の作品と、最近、それも1990年代以降の作品を聞き比べれば、ドラえもんの声は低くなり張りもないのは明らかであった。見方によっては既に声変わりしていたようなものだ。それでも、死亡で交代という最悪の事態は避けられたものの終わりではなくて、キャストを変えてまで、まだ続けられることになった。藤子・F・不二雄が、亡くなる直前に藤子プロ宛に書いた「ねじ巻き都市冒険記」のメモ書きの最後に次のような一文がある。
「藤子プロ作品は、藤子本人が書かなくなってからグッと質が上がった」と言われたら嬉しいのですが。
ここで注目されるのは、「藤子プロ作品」と書いていて、「ドラえもん」だけに限定していない点であろう。しかし、現況はどうであろうか。むぎわらしんたろう氏のドラベースはそこそこ人気があるらしいのだが、所詮、ドラえもんの派生作品である。ドラえもんに匹敵するような作品を作り出すのは並大抵のことではできないが、チャレンジすらしていない。これ以上ドラえもんで何をやりたいわけ?いつまでドラえもんにしがみつくの?「夢があるから」とかあるだろうけど、「夢がある」が表だとしたら、「ドル箱コンテンツだから」が裏だろう。ドラえもんは続いているが、作品の中身がないがしろにされている。以前にも書いたけど、ドラえもんは国民的キャラクターにはなったが、国民的漫画にはなるどころか、逆に年々マニアック化しているような気がする。
現在のアニメドラで、時々、渡辺歩演出に関して論争が起きるけど、肯定派によく見られるのは、マンネリ化したドラに新しい血を入れたとかそういう論調だと思う。でも、結局、ドラえもんという使い古されたものにしがみついていて、完全に新しいものを作り出してはいない。渡辺歩が手がけるドラえもんが好きなのか、渡辺歩が好きなのかどっちなのだろうか。仮に渡辺歩が独り立ちして完全オリジナル作品を発表したとしたら、見るのだろうか。自分の場合、渡辺歩演出のドラえもんが嫌いであって、渡辺歩が嫌いなわけではない。個人的には、キャスト一新を機会にスタッフも総入れ替えして、渡辺歩にはオリジナル作品を手がけてほしいと思うし、藤子プロには子供向け漫画の完全なる新作を創り出してほしいと思う。
何はともあれ、キャストが変わっても続くことは決まってしまったのだから仕方がない。これから何年も演じ続ける"かも"しれないのだから、新キャストに話題性第一の安易な芸能人の起用だけは絶対にやめてほしい。そして、現行のドラえもんは、一度最終回を作って終わらせ、いったん全てをリセットして、第1話からやり直すべきである。個人的には、現在の声優陣での最終回には45年後・・・を使ってほしい。同時に、新ドラでは、主題歌も新調してほしい。主題歌は短期的な話題性と売上を狙った曲ではなく、これから永遠に歌い継がれるような名曲を目指して作ってほしい。かつてシンエイ動画はドラえもん、怪物くん、忍者ハットリくん、パーマン、オバケのQ太郎と、過去に実写またはアニメ化された作品をリメイクする際に、主題歌も全て新しく作り直したが、ほぼ全て、現在まで歌い継がれている。そして、原作漫画ではドラえもんとのび太は大の仲良しの友人という関係だったのが、アニメは「ウフフフフ」という笑い声に代表されるように、ドラえもんとのび太の関係は母と子のように描かれていた。これがたびたび自称良識者や教育ママからの批判の的にされることもあった。リニューアルをきっかけに、まったく新しい番組として原作漫画の持つドラえもんの本当の面白さを活かして、原点回帰してほしい。最近のアニメドラは、仮に自分に子供がいたとするならば、とても見せる気にならない内容だが、見せられるものを作ってほしい。
繰り返しになるが、死亡で交代という最悪の事態は避けられた。過去、のび太のパパ役の加藤正之氏が亡くなったときは、悲しいかな、あまり・・・というか全くといっていいほど話題に上らなかった。当時、いつの間にかパパの声が変わっていた事に気づいて、かなり違和感を感じていた。その違和感はいまでもある。
現在のドラえもんの残された数ヶ月間、精一杯演じきってほしい。感謝の言葉はすべてが終わってから述べたいと思う。
と、書いてはみたが、第一報を聞いたときはさすがに動揺した。2005年の映画は休止決定の際には、こういう事を書いた事もあったが、声優交代がこんなに早く、こういう形でやってくるとは。
キャスト交代に失敗して唐突に打ち切り決定なんて結末は見たくないよ。きれいな形でアニメドラを終わらせられる勇者が現れるのはいつの日の事か。
ついでに、今までドラえもんを演じた声優は、
・富田耕生(日本テレビ版初代)
・野沢雅子(日本テレビ版2代目)
・大山のぶ代(テレビ朝日版)
・高橋和枝(テレビ朝日版、1980年のお正月スペシャルに登場した生まれたての黄色いドラえもん)
・横山智佐(テレビ朝日版、1995年公開の映画・ドラえもん誕生に登場した生まれたての黄色いドラえもん)
以上の、5名である。
参考記事
ドラえもんの声が交代へ 来春、大山のぶ代さん降板(共同通信)
「ドラえもん」の声優交代へ 大山のぶ代さんら5人(朝日新聞)
放送25年の「ドラえもん」、大山さんら声優5人交代(読売新聞)
ドラえもんの声が交代へ・大山のぶよさんが来春降板(日経新聞)
「ドラえもん」声優5人、来春に若手と交代へ(産経新聞)
ドラえもん:来年3月「声変わり」 大山のぶ代さんら降板(毎日新聞)
ドラえもん25年声変りしちゃう、大山のぶ代ら交代(ZAKZAK)
大山のぶ代ら5人が「ドラえもん」降板(日刊スポーツ)
ドラえもんの声優が交代へ(スポニチ)
ドラえもんの声、交代へ…大山のぶ代ら来春降板(サンスポ)