大山のぶ代版最終回1時間スペシャル

最後くらいは大目に見ようと思っていた。しかし・・・いくらなんでもひどすぎる。

質の低下が著しい晩年の大山ドラの中で、先々週の「魔法使いしずかちゃん」と先週の「45年後・・・」で久しぶりに良作が見られたから、今回も期待はしてみたのだが・・・。

最終回という事で久しぶりに見て、あまりの変貌ぶりに驚かれた方、これが今のアニメドラの姿です。

スペシャルの一本目に「ハリーのしっぽ」を持ってきたのは良かった。本放送は1984年12月21日、ハレー彗星が地球に接近する2年前である。また、クレヨンしんちゃんオトナ帝国の逆襲で名を馳せた原恵一が絵コンテ及び演出を担当した作品である。現在では聴けなくなってしまった大山のぶ代の若々しい声も生き生きとしていた。また、加藤正之演じるのび太のパパを聴くことができた。実は、本日はのび太のパパ役だった加藤正之氏の命日だったのである。加藤氏は咽喉癌のため、1993年3月18日、61歳で亡くなっている。

そして、大山ドラえもん最後の新作となった「ドラえもんに休日を?!」である。ここ数年の低レベル化したドラえもんを象徴するような作品だった。ちなみに、本作はてんとう虫コミックス35巻に収録されている。雑誌初掲載は小学五年生1984年9月号であり、半年後には早くもアニメ化されている。今回はリメイク版であった。しかし、ここ最近の傾向である薄っぺらい感動話に成り下がってしまった。

これだけは変えてはいけないポイントがほとんど改悪された。今回、演出を担当した安藤敏彦は、一度目のアニメ化の際にも演出を担当している。ただし、原恵一との連名クレジットであるが。

(2005.3.19補足)
上記はドラちゃんのおへや内のテレビアニメについてを参考にさせていただきましたが、1989年の大晦日だよドラえもんのEDスタッフロールを見返したところ、「ドラえもんに休日を」の演出は、もとひら了になっていました。この点について、ドラちゃんのおへや管理人のおおはたさんからコメントをいただきました。

 89年大晦日ドラのEDクレジットですが、「演出」に関しては、もとひら了芝山努両氏しかクレジットされていないはずです。
つまり、各話の放映時期におけるチーフディレクター(もとひら氏はOPで「演出」とクレジットでしたが)を、89年大晦日では「演出」として扱ったと考えられます。
ただ、それだと「ドラえもんに休日を」は、「演出 芝山努」となるはずなのですが、おそらくミスでしょう。85年当時、もとひら氏は演出から脚本家に転向していましたから、少なくとももとひら氏が演出と言うことはありえないはずです(ただし、87年に一度だけ、もとひら氏自身脚本の回でコンテを切っていますが、これは例外でしょう)。

原作漫画がなぜ名作なのか。それは後ほど書くとして、今回の話は原作を抜きにしてアニメ単体で評価したとしてもひどすぎる。ここ数年の質の低下を象徴するような出来であった。大山ドラえもん史上ワースト5に入る話であろう。

一番駄目なのは呼びつけブザーを押させてしまった事である。呼びつけブザーは絶対に押してはいけなかった。一方、ハイキングに行きつつも、のび太を忘れることが出来ないドラえもん。友達という存在ではなく、完全に保護者的存在になってしまった大山ドラえもんの姿である。また、中盤をオリジナル展開にした後、ラストで原作にも登場したいじめっ子を唐突に登場させるなど、脚本そのものの荒さも目立つ。そして、ここ数年のドラえもんの特徴である、ぐんにゃり作画に代表されるように、無理のある脚本を動きで無理矢理笑わせようと試みる展開だった。隣の部屋で非藤子ファンの弟たちが馬鹿笑いしているのをみて、何とも言えない複雑な気持ちになった。

そして、番組の最後にかかるのは、全てをぶちこわすダブルユーの史上最低のエンディング「ああ、いいな」。26年を飾る最後くらいは大杉久美子の透明感のある歌声を聞かせるような良心はなかったのだろうか。

冒頭にも書いたように、「ドラえもんに休日を!」がアニメ化されたのは今回が初めてではなく、一度目は1985年3月8日に放送されている。以後、一度目のアニメ化作品を旧作と称する。旧作は1989年の大晦日に再放送された際に録画済であったので、今回、見返してみた。

ちなみに原作漫画だと、ドラえもんは最初と最後にしか登場しない。旧作のアニメだと、ハイキングの最中に時々はのび太を思い出すものの完全に休日を楽しむ。アニメで追加されたシーンとして、川に落ちた野良猫を助ける場面と、野良猫の飼い主を捜す場面がある。その後は原作通りの展開になり、犬に追いかけられて屋根づたいに逃げようとしたものの、滑り落ちたところはトラックの荷台。そして、必死に荷台につかまりながら隣町まで運ばれていく。ジャイアンスネ夫もそれを追いかける。信号待ちの際にようやくトラックから降りることが出来たのび太はいじめっ子二人組にぶつかってしまう。そして、ジャイアンスネ夫がどこまでもドジな奴と言うのである。しかし、のび太は呼びつけブザーを一度も使用することなく自ら破壊していじめっ子二人組と戦おうとする。それを見たジャイアンスネ夫は感動して、のび太の助けに入るのである。ピクニックから帰ってきたドラえもんのび太に対して大丈夫だったか尋ねるラストシーンでも、アニメではワンポイント工夫されていた。寝転がったのび太の顔に絆創膏が貼ってあったのだ。そしてのび太は手で絆創膏を隠して「あたりまえさ!平和な一日だったよ」という。この平和な一日だったというセリフこそが重要だったのだ。ドラえもんは絆創膏を気にしつつもにやにやと笑う。

旧作は全体を通してみても部分的には原作を超えた部分もあり、名作と呼べる出来であった。また、ハイキングでドラえもんが持ってた水筒がパーマンの形をしていたという遊び心もあった。

何はともあれ、本日をもって、26年弱続いた大山版ドラえもんのテレビシリーズは終了した。しかし、感慨深いはずなのに、不思議と未練はない。来週は昨年公開の映画が放映されるが、今度こそ本当に幕を下ろすことになる。現声優陣への言葉は来週書こうと思う。

先週放映された「45年後・・・」が今日放送されていれば・・・。そして、エンディングに主題歌と呼べる曲だった頃の歌を流していれば・・・。何とも後味の悪い結末であった事が残念でならない。


参考サイト
ドラちゃんのおへや

参考文献
ドラえもん作品完全リスト(Neo Utopia)