舞-HiME 第26話『shining☆days』

物語は、全員復活、最終的に犠牲者0で終了した。

第20話について書いたエントリの最後で

あと6回。どうやって収集をつけるのだろうか。
ドラゴンボール方式の生き返って万々歳は勘弁してもらいたい。生き返ってしまうとバッドエンドである。

と書いたが、想定しうる最悪のラストを見事に取り入れてくれました。もし、最終回がこうだったらという恐れがこれでもかという位見事に的中した。

半ば強引ながらも、登場キャラクターの心理描写が秀逸だったために、途中から感情移入をして見てしまった。真面目に見ていた俺が馬鹿だった。_| ̄|○

最終回、前回までに死んだというか消滅したキャラが、全員あっさりと復活した時点で幻滅し始めていた。そして、復活したHiME達がチャイルドと共に舞衣の元にかけつける。静留にやられたHiME達は静留を問いつめかけるが、静留は笑って、ただ一言「堪忍なぁー」。ますます幻滅。そして、命の兄である黒曜の君に襲われかけた舞衣の前に命が立ちはばかり、相打ちとなって双方倒れる。命は腰を刺されていた。号泣する舞衣の元で意識を失っていく命。一瞬、死んだと思わせておいて、実は、腹が減っていただけだった。ここで命が命を落とす展開であれば少しは見直したのだが、それも適わなかった。

あとは、シリーズ序盤のドタバタ日常に戻ってしまった。8話以降廃人になっていた日暮あかねもベタベタな恋愛を楽しんでいる。黒曜の君である黎人も、なぜか元に戻っている。

こうしているうちに栗林みな実が歌うOP「Shining☆Days」がかかり始め、物語は終了した。

結局、舞-HiMEというアニメは、26話の静留のセリフ、「堪忍なぁー♥」に集約されているような気がする。キャラクターが自我を失い壊れていく心理描写を、今まで散々丁寧に描いておきながら、結局はこの一言で片付けてしまった。

終わりよければすべてよしという言葉があるが、裏を返せば、終わり悪ければ全て悪いと言うことにもなる。見事に最終回でコケてくれた。

シリーズ開始当初、たいした期待もしていなかったので、繰り返し録り用のVHSテープに3倍録画していたが、5、6話あたりからS-VHS標準録画に切り替えた。

15話でシアーズ財団を倒した後、16話でHiME戦隊としてまとまりかけたように見えた。16話ラストから始まり、17話から本格的に開始されたバトルロワイヤル的展開。固まりかけたはずの友情が、ほんの些細なことがきっかけで壊れていく様は圧巻であった。しかも、そのきっかけを作ったのは、友情崩壊の原因を作りやすいと思われた奈緒ではなく、ある意味最も作りにくいと思われたシスターであった。そして、20話での舞衣の弟・巧海の死、21話から24話にかけてのチャイルドが次々に消滅していき、HiMEも廃人となっていく展開。生徒会長・静留の、なつきに対する狂った同性愛、詩帆と舞衣の大切な人が共通だった悲劇を描いた24話。

17話から24話までの展開が怒濤の連続で、本当に感情移入して見てしまった。その辺は、20話の感想エントリに現れている。終始、軽いノリを続けていたラジオドラマも、静留のなつきに対する思いについて、テレビでは描ききれなかった部分を補完する回を用意してきたりしていた。ここまで掘り下げて描くのであれば、全員復活のラストはないだろうと信じていた。一方で、全員復活エンドだと、ただの3流作品に成り下がってしまう恐れも、終始捨てきれないでいた。そして、見事に成り下がってしまった。

・・・・・・。

17話以降の鬱展開になってから切った視聴者も多いらしいが、切らなかった視聴者は全員死亡エンドでも耐え切れたと思う。チャイルドがやられるとHiMEが最も大切に思っていた人が消滅する。この設定も、結局、活かしきることができなかった。

それに、鬱展開というが、かつての富野作品や1970年代のタツノコプロ作品に比べれば生ぬるい部類だろう。視聴者を舐めるなよ。皆殺しエンドの代表作、無敵超人ザンボット3伝説巨神イデオンは数年前に視聴済であるし、テッカマンキャシャーンなどのタツノコ作品も全部ではないものの、評判の高い回は見てきた。だからという訳ではないけれど、舞-HiMEが悲劇的な終わり方だったとしても落胆はしないし、むしろ、そうしてくれた方が評価が高くなるよ。

心理描写があそこまで丁寧に描けるのであれば、大切な人を失ったショックから立ち直る過程を描いてほしかった。これが描かれたのは25話の舞衣だけ。

失望したのは全員復活エンドだったからだけではない。最終回のシナリオのひどさである。それまでのシナリオから大幅にレベルダウンしたのは何故なのだろう。最後まであのテンションで行く勇気はなかったのか。

大切な人を失ってしまった悲しみ、その悲しみのどん底から這い上がっていく希望に満ちたラストにしてほしかった。そう簡単に立ち直れるものではないけど、それでも明日への希望が持てるような終わり方が・・・。

制作側から示されたのは、廃人からの抜け出しが、大切なあの人の復活だもんなあ。

結局、このアニメって、大切な人の消滅やレイプ描写、百合展開などは全てアニヲタを釣るためのエサに過ぎなかったという事だ。あの最終回ではこのような印象しか残らない。

鬱展開になっても主題歌が変わらず「Shining☆Days」を使い続けた時点で気づくべきだったのか。

半年かけた茶番劇につきあわされてしまった。

25話までは間違いなく名作である。梶浦由記のBGMだけは良かったよ・・・本当に・・・。


最終回がああなってしまったので、どのような展開だったら納得したのか勝手に考えてみた。以下は妄想最終回である。

・最後は舞衣も死亡。HiMEは全員廃人になるか死亡。こうして世界は救われたが・・・。泣き叫ぶ雪乃、千恵とあおい。それを碧がやさしく抱きしめる。BGMは「風華学園校歌 水晶の守り」。
・舞衣と命の最終決戦の後、舞衣だけが生き残る。ラストは犠牲者のお墓を前に舞衣と生き残った元HiME達が集まってくる。BGMは「小さな星が降りる時」。
・最終回Aパートで消滅したキャラとチャイルドは復活したが、それは一時的なものだった。黒曜の君を倒した後、再び消えていく。号泣する舞衣。BGMは「媛星」。数ヶ月後、もしくは数年後、成長した舞衣と雪乃、そして碧はお墓の前で手を合わせる。
・最終回で消滅したキャラは全員復活。黒曜の君を倒した後、舞衣と命で最終決戦。両者相打ちになる。巧海の目の前で意識を失っていく舞衣。「お姉ちゃんの分まで生きなさいよ。」そして死亡。一人の犠牲によって全員は救われた。

全滅エンドと復活エンドどっちもあり得るが、犠牲者0で全員がハッピーになるラストは考えられなかった。

なんか、今後、真面目にアニメ見るのが馬鹿馬鹿しくなりそうである。


同時期放映の月詠。こちらも途中で主要キャラが死んだと思わせる描写があるのだが、一方では、タライが落ちてくるドリフ演出の連続だったので、終始冷めた目で見てた。結果的には、全話通してみるとそこそこ楽しめた様な気がする。