週刊現代の呆れた記事

いよいよリニューアル第1回目の放映が今週に迫ったドラえもん。この時期、声優交代に関して根も葉もない噂レベルの記事が載ることはできれば避けたいものだが、今回、週刊現代に「ADは見た!『春の新番組』アホバカ生中継」と題して掲載された記事には呆れた。この記事、AD(アシスタント・ディレクター)の発言とされているが、取材に答えたのがどこの組織の誰なのかさっぱりわからない。

記事は以下のような事が書かれていた。

(前略)局側の根回しがなってないせいで軋轢を生んでいるようだ。新スネ夫役の関智一が旧スネ夫役の肝付兼太に電話で『新しくスネ夫をやることになった関です』と挨拶したら、肝付は『あんた誰?』と言って電話を切ったそうです。あまりに唐突な交代劇に、旧声優陣達には不満が渦巻いている。ドラえもん大山のぶ代も、いまだに怒っています。

確かに、肝付さんは『あんた誰?』という様な事は言っている。だがこの話には、肝付さんは、電車の中で携帯電話で受けたために、声がよく聞き取れず、電話の相手が誰だかわからなかったという重大なオチがあるのだ。なぜ、自分がこのことを知っているのか。実は、このやりとりを話したのは関智一自身であり、新声優記者会見の場において、笑い話として話していた。

関さんは、スネ夫役が決まり、肝付さんの携帯電話に電話してみたところ、肝付さんはどうやら電車に乗っていたらしい。関さんが「今度、スネ夫役に決まりました。」と挨拶しても、「うん、うん」としか答えない。しまいには「あ、そう。で、誰がどんなご用ですか?」と言ってしまった。肝付さんは電車の中にいたために、かかってきた相手がなんて話しているのかさっぱり聞き取れず、誰からかかってきた電話なのか確認もしなかったため、「あ、そう。で、誰がどんなご用ですか?」というセリフが出たというのが真相である。

だいたい、肝付さんの携帯電話の番号を知っているほどの関係なのに、なぜそうなるのか。この記事は、オチがあるかないかで、全く違った意味になってしまう。その重要な部分を週刊現代は書かなかった。その部分を調べもせずにこのような形で記事にしてしまった週刊現代には本当に呆れる。

また、肝付兼太は、テレビブロスのインタビューで、新声優について次のように語っている。

関智一君は前にスネ夫の幼少の頃をやった事があるんで、ぴったりと思いましたね。』

記事の残りの、『あまりに唐突な交代劇に、旧声優陣達には不満が渦巻いている。』に関しても、唐突とは笑わせる。また、最後の、『ドラえもん大山のぶ代も、いまだに怒っています。』に関しても、いつ、どのような形で怒っていたのだろうか全く書かれておらず、素っ気なく書かれてあるだけ。

大山のぶ代と言えば、声優交代が明らかになった際にも、某週刊誌に『大山のぶ代、交代知らなかった』などと誤報記事を書かれて、心を痛めていた。

声優達の間では、放映25周年を超えた頃からそろそろ卒業してもいいかもという話が出ていたことや、交代を告げられたのが5月頃だったこと、そして、交代を告げる際のスタッフの様子などは、大山のぶ代をはじめとした旧声優自らが様々な雑誌のインタビューで語っている。

ドラえもん役・大山のぶ代
「私たちの声に似せる必要はないと思います。初めは違和感を感じても、子供はどんどん大人になってきます。初めてドラえもんに出会った子供に対して、可愛い素直なドラえもんの心をありのままに表現してくれればいい。登場人物たちの心をいかにつかめるかです。その心だけを、次の世代につなげてほしい」
(サンデー毎日 3月6日号)

のび太役・小原乃梨子
「私たちは、幸せな一つの歴史を終えたのだから、次の方たちには自由にのびのびと新しい『ドラえもん』と、のび太くんをつくっていってほしいですね。」
「声優交代の意向は、今年*1の春くらいには聞いていました。続けたくないと言えば嘘になりますが、みんな元気なうちに卒業が迎えられてよかったと思います。」
(女性自身 4月12日号)

しずか役・野村道子
『完全燃焼したという満足感からか、表情も口調もとても明るい野村さん。卒業*2は3年ほど前から考えていた。
「当時、アクシデントでアキレス腱を切ってしまったんです。手術を受けたくらいの大ケガだったんですが、収録は休めなくて。結局、車椅子でスタジオに入って杖をついて収録したのですが、そのとき“体力の限界”を感じてしまったんです。この春での『ドラえもん』降板が決定したので、ちょうどいい機会なのでワカメも降ろしてもらったんです。」』
(女性自身 4月19日号)

ジャイアン役・たてかべ和也
スネ夫役・肝付兼太
──キャストを変えると伝えられたときはどう思いましたか?
た:「そういう時期に来てるんだな、と割と淡々と受け止めましたね」
肝:「まあ、いつまでも僕らができるわけはないんだし、映画25周年はいい節目かなと思いましたね。」
──新メンバーに一言お願いします。
た:「自分たちなりの『ドラえもん』を作っていけばいいんで。『ドラえもん』の心を次に繋げていく気持ちだけ持っていれば、それでいいと思います。」
肝:「僕らの声が耳に残っているでしょうけど、初めて自分がやるという気持ちで演じればいいんじゃないかな。」
(テレビブロス 4月2日号)

いくつか引用してみたが、これらはほんの一部分である。今回の週刊現代の記事のように重要な部分が抜け落ちている事はないと思うが、全文を掲載する訳にはいかないのが残念である。

とにかく、何から何までおかしい週刊現代の記事。他の複数の雑誌の記事を総合すると、こんな記事はおかしいとわかるのだが、困ったことに、こんな記事を信じてしまう読者が多いのも事実。既に、ブログで取り上げてしまった方もおられる(id:kaiwareman:20050412、id:cz8686:20050412)。間違った事を植え付けられてしまった読者に対して、どうやって教えていけばいいのか。ささやかではあるが、ブログにこうして書いていくのも手段であるとは思う。

声優交代劇に水を差すような週刊現代の記事。大手週刊誌がこのような記事を掲載してしまった罪は重い。仮に抗議したとして「記事は適切な取材に基づいている。内容には自信がある」なんてお決まりの解答が返ってきたとしたら、週刊現代の取材能力なんてその程度ということの証明にもなるよなあ。

*1:2004年

*2:サザエさんのワカメの卒業