声優変更をめぐる話 ああっ女神さまっの場合

ドラえもんの声優変更が話題になっているが、声の変更をめぐる話として、ああっ女神さまっを例にしてみる。

本作は、講談社月刊アフタヌーンで連載されており、今月発売号で200回となるなど、15年以上も続く作品である。1993年にはOVAが発売、1998年にSDキャラ番外編「小っちゃいって事は便利だね」がWOWOWで放映、2000年には映画が公開されているが、意外なことに、本編がテレビアニメ化されたことがなかった。それが、2005年になって、突如テレビアニメ化された。正直、テレビアニメ化するに最適な時期を逃してしまい、今さらである感は否めない。今までは、主要キャストの声はOVAから映画まで変わらなかった。OVA発売当時20代から30代だった声優も、30代後半から40過ぎになっており、年齢を元にギャラがランク制で決まる声優業界を考えると、テレビ版でもそのまま起用されるかどうか注目していた。主要キャラクターに関しては、同じ声優になったことは放映開始前に発表されていたが、脇役についても、原作漫画のキャラクターに関しては、一人を除いて同じ声優を起用した。OVAと同時期に発売されたCDドラマにしか登場しないキャラクターまで、変更なしというこだわりぶりである。

ところが、一人だけ、OVA版とキャストが異なるキャラクターがいた。三嶋沙夜子である。OVA版では、麻見順子が演じていたのだが、テレビ版は能登麻美子に変更になったのだ。月刊アフタヌーンに掲載された能登麻美子本人のインタビューを読む限り、オーディションで決まったわけではなく、制作サイドから依頼が来ての起用らしい。ベテラン声優だけでは若年層を取り込めないため、若手声優で勢いのある能登麻美子を起用しておこうという政治的な意図を感じた。

三嶋沙夜子は高飛車系キャラであり、能登麻美子の癒し系ボイスは合わないのではないかと不安に思ったものだが、実際にオンエアが始まると、その不安は的中した。全く声が合っていない。本人もかなり無理をしているのか、声が安定していない。OVA版の麻見順子声がはまり役だっただけに、余計に見苦しい。インタビューでも「私が今までに演じたことがない役」と答えていたし、どうせ声優を変更するならば、もっと合う声質を持つ声優はいるだろうにと思ったものだ。オンエアも10話を過ぎて、声は安定するようになったが、未だにあの声質は役柄にあっていないと感じる。これからも完全に慣れることはないだろう。

SDキャラ番外編「小っちゃいって事は便利だね」を除くと、OVA版、映画版、テレビ版は一貫して同じ人物が監督を務めていることもあるが、三嶋沙夜子以外のキャスト変更が無かったのは、今までのファンを大切にする思いもあったのだろう。監督自身も、ベルダンディー井上喜久子以外は考えていないらしく、テレビアニメのキャストが発表される以前、アフタヌーン誌に掲載された読者からの質問に答えるコーナーで、「ベルダンディーの声は井上喜久子さんですか?」との質問に対して、「他に誰かいますか。」と答えていた。

1998年に放映された「小っちゃいって事は便利だね」では、井上喜久子産休により、やむを得ず第13話までは岡村明美が代役を務めた。声質が井上喜久子と違っていたので、違和感はかなりあった。アニメ誌等では産休は告知されていたが、知らないファンは何故変えたのかと苦情を入れたとか。スタッフも最大限の配慮をしたのか、ベルダンディーのセリフはそれほど多くなかった。井上喜久子は第14話から復帰したが、産休明けとあって、声に少々張りがなかった。

本作は、OVA版が企画されるより前に、CDドラマが発売されたことがあり、キャストが全く違っていた。

ベルダンディー日高のり子
ウルド:松井菜桜子
森里蛍一:山口勝平
森里恵:横山智佐

このCDドラマを聴いたことはないが、原作漫画初期のベルダンディーであれば、井上喜久子より日高のり子の方があっていそうな気はする。原作漫画は、巻が進むにつれて、ベルダンディーの顔が激しく変わる作品としても知られるが、性格も、OVA版が動きだし、ベルダンディーの声が井上喜久子に決まった頃から、変化していったような気もする。キャラクターが演じる声優に近づいていったようなものだろうか。

女神さまっの声優はOVA版発売当時の張りはなくなったといえ、まだ許容範囲である。だが、衰えを全く感じていないわけではないのは事実。やはり、もっと早い時期にテレビアニメにしておくべきだったと思うのである。

それでも、放映開始前は何で今さらアニメ化なんだと言われていたのが、いざ始まってみると、安心してみられる癒し系アニメとして、初見の方も意外と多い事がわかり、本作の底力を見たような気がする。視聴率も深夜枠としては高い3%を超える事もなど、高視聴率を維持している。シリーズの最初から再構成する形のアニメ化なので、最近の原作ほどだれてきていないのもあるだろう。