藤子不二雄Aランド全149巻ついに完結

正式な発売日は明日であるが、本日、書店で見かけたので購入してきた。そして、ついに手元に藤子不二雄Aランド全149巻が揃った。完結まで約3年を要したが、全149巻はあっという間だった。復刊を実現させた復刊ドットコムには、心から感謝を申し上げたい。

復刊ドットコムに一括で注文すると、特典がもらえた訳であるが、一括で注文できるような体力はなく、発売日が来る度に、書店に足を運んで購入することを続けた。それでも十分に満足である。

思えば、藤子・F・不二雄がこの世を去った1996年当時、ドラえもん以外の藤子作品の多くは、重版未定の事実上の絶版状態になっていた。藤子漫画を読みたくても手軽に読めない状況になっており、古本屋で高価な絶版漫画を探したり、国会図書館に足を運ぶしかなかった。当時は、まさに日本においてインターネットが急速に普及しようとしていた時期でもあった。藤子漫画復刊署名運動は日本のインターネット黎明期から存在していた。まだ、「復刊ドットコム」開設されていなかった頃である。復刊ドットコムが開設されると同時に、当時の藤子不二雄ファンサイトは、これはチャンスとばかりに投票を呼びかけた。その結果、復刊交渉の第1号となったのであるが、最初は交渉担当者のやる気が全く感じられず、復刊は絶対無理と思ったものである。

現在の復刊ドットコム藤子不二雄Aランドを一番の看板に持ってきている事からは信じられないことあるが。復刊ドットコムは元々専門書や小説の復刊を第一の目的に設立されたような感じがあり、それが第1号がまさか漫画になるとは思っていなかったのではないか。

復刊ドットコムから来たメールの日付を元に、復刊に至るまでの推移を振り返ってみる。

2000.5.27 復刊ドットコムに「藤子不二雄ランド(第一期全301巻) 」として登録
2000.5.28 復刊交渉決定(当時は50票に達した時点で交渉決定だった)
2000.6.8 中央公論新社初交渉
2000.6.26 交渉結果報告
2001.9.5 一部復刊の方向で検討しているとの報が伝えられる
2001.9.20 「藤子漫画復刊署名運動」の協力により、復刊後の需要に関してアンケート開始
2002.1.25 藤子不二雄A氏サイドから刊行の了解が出た事と藤子・F・不二雄氏サイドから現時点ではOKが出ないとの報告。
2002.2.27 藤子不二雄Aランド読者特典についての協議
2002.3.20 藤子不二雄Aランド発売方法について協議
2002.4.4 定価、発売時期など重要事項について、正式に合意完了
2002 4.18 刊行計画の詳細が正式決定
2002 5.15 先行予約開始。中央公論新社に復刊の意志がないためブッキングから発売されることも発表
2002.6.29 初回配本発売
2005.7.12 全149巻完結

以上が主な概要である。また、復刊ドットコムメッセージコーナーでは、2000年から2002年にかけて参照すると、担当者の復刊に至るまでの苦労をコラムとして読むことができる。こちらは是非読んでいただきたい。

藤子ファンにとっての究極の理想は、藤子不二雄全集の発刊であるが、全集出版ではなく、藤子不二雄ランドの復刊、しかも、A作品だけという形になった。ファンの掲げる理想と出版界の厳しい現実がかけ離れていることを身をもって痛感した。しかし、藤子不二雄A作品だけとはいえ、復刊することができたのは、復刊ドットコム安孫子素雄先生、そして、当時の藤子ファンが一致団結して頑張った結果と言えると思う。当時先頭に立っていた藤子不二雄ファンサイトの管理人や、掲示板に書き込んでいたファンの多くは、社会人として多忙になった人も多く、現在では、ネット上での活動を停止せざるを得なくなった人も多くいる。でも、その方々のおかげで藤子不二雄Aランドが復刊できたことは、全藤子ファンが頭の片隅に入れておくべき事だと思う。

個人的には、発売日を迎える度に、ファンサイトに感想ツリーが立てられ感想を語り合う状況になるのが理想だったが、実際には、藤子不二雄ファンサイトにおいて、藤子不二雄Aランドが話題になることはほとんどなかった。店頭でも売れているようには思えず、取扱書店は減少していった。香取慎吾主演で忍者ハットリくんが映画化された際には、タイミング良く原作本の発売も合わせ、帯も付けた状態で売られていたが、果たしてどれだけ売れたのかどうか。このままでは遅かれ早かれ、品切れ重版未定の事実上の絶版になるのは時間の問題と思われる。

藤子不二雄Aランドを復刊させたのは、藤子不二雄ランドが買えなかった人のみならず、若年層が手軽に藤子作品に触れる機会を作り出し、作品を未来へ残すという目的もあったはずだ。復刊ドットコムの2002.05.15付のメッセージには

当初は各巻の定価を千円周辺で考えていましたが、先生の「多くの方に手に取っていただきたい」とのご要望で、思い切って新刊当時の価格まで復元しました!本体価格390円(正確には、当時は税込390円)は皆さまにきっと喜んでいただけると思います。何と言っても今は文庫でさえも、500円台後半から600円台中盤くらいですから。

と書かれている。しかし、若いファンは、安価に買える藤子不二雄Aランドには見向きもせず、高価な古本を探し回る始末。一度、某掲示板で話題を振ってみれば、こんな悲しいやりとりになってしまった。自分で稼げるようになってからでも決して遅くはない。それまでは、安価に買える、できるだけたくさんの作品に触れた方がいい。

また、藤子不二雄A作品を避ける方が多いが、巷でよく言われる、児童漫画のF、ブラックユーモアのAに関しては異議がある。確かに、ブラックユーモアは藤子不二雄Aの得意とする分野ではあるが、ほんの一面に過ぎない。実際、藤子不二雄Aランドのラインナップを見てみると、ブラックユーモア作品が占める割合は少ない。怪物くんや、プロゴルファー猿等の作品も忘れてはならない。

現在、ファンサイトに目を向けてみれば、藤子ファンではないドラえもんファンが増えた。彼らは、仮に、藤子・F・不二雄全集もしくはそれに準じた物が出たとしても、興味すら示さないだろう。しかし、一人でも多くの人に買っていただけなければならないし、理想的には、藤子ファン、ドラえもんファンが全て融合するのがいい。そのためには、藤子不二雄Aランドが一冊でも多く売れて、絶版にならないようにしなければならない。たとえ藤子不二雄A作品に興味がなかったとしても、まんが道だけは絶対に読んでおいた方がいい。

もし、興味をもたれた方がいたら、とりあえず、まんが道から入ってみるのがいいと思う。いつ再び絶版になるか余談を許さないほど出版界の掲げる現実は厳しいが、できる限り長く、藤子不二雄Aランドが手軽に買える状況が続いてほしい。